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EdTech・AI活用

AI検索が変えた受験生の情報収集 資料請求数はまだ実態を映しているか

「資料請求はしていないのですが、出願しました」

そういう受験生が、この数年で増えています。オープンキャンパスでも、事前の接点がまったくない当日参加が目立つようになりました。心当たりのある方は多いのではないでしょうか。

米国の調査に、この現象と重なる数字があります。

高等教育のマーケティングを手がけるEducationDynamicsが2026年2月に公表したベンチマーク調査によれば、教育関連のGoogle検索の78%でAI Overviewsが表示されます。学生は検索結果をクリックする前に、知りたいことの答えを得ている。そして、資料請求も問い合わせもせずに出願する「ステルス出願者」は2020年比で約10倍に増え、2025年には全出願の9.7%を占めました。検討を始めてから問い合わせに至るまでが3週間以内という層が55%。合格した最初の学校にそのまま入学するのが72%。同レポートは、従来型のチャネルに依存し続けることを「最も危険な戦略」と表現しています。

これは米国の数字です。日本の実態を示すものではありません。

ただ、私たちが支援している学校のデータを見ていると、似た動きは確かにあります。事前の接触履歴がほとんどないまま出願してくる層は、体感で1割から2割のレンジで増えています。オープンキャンパスでも、資料請求をしない、突然来校してくる層が3割ほど増えている印象です。

正直なところ、これをすべて生成AIの影響だと言い切ることはできません。突然の出願が増えている背景には、年明け入試の難化によって併願校を急に増やさなければならない、という受験生側の事情があります。突然の来校のほうは、進路相談会で名簿を取得しづらくなっていることも影響しているはずです。要因は一つではありません。

ただ、実際の場面を思い浮かべると、変化の中身は見えてきます。ある高校生が、学びたい分野と通える範囲を打ち込んで生成AIに尋ねる。数校の名前と、それぞれの特徴が箇条書きで返ってくる。気になった2校について「違いは何か」「学費はどのくらい変わるか」と重ねて聞けば、比較までその場で終わります。資料を取り寄せる理由が、そこにはありません。

そして学校側から見ると、このやりとりはどこにも残りません。サイトのアクセスログにも、資料請求リストにも現れない。受験生のなかでは検討が相当進んでいるのに、こちらの手元には記録が何もない。そしてある日、オープンキャンパスに突然現れます。

はっきりしているのは、受験生が「学校を調べる」プロセスそのものが変わりつつある、ということです。複数の大学の資料を取り寄せ、届いた大学案内を読み、オープンキャンパスに申し込む。この順番を踏まない受験生が、確実に増えています。

ここで困るのは、募集の計画が資料請求数を先行指標として組まれていることです。前年を下回れば、その理由を説明しなければならない。しかし母集団の一部しか捉えていない指標に対して、正しい説明ができるでしょうか。

資料請求数を追うのをやめるべきだ、と言いたいのではありません。有効な指標であることに変わりはない。申し上げたいのは、その数字が何の一部を映しているのかを、自校の言葉で説明できる状態にしておくということです。

そのために必要なのは、年に一度の振り返りではなく、変化が起きている最中に見にいくことだと思います。

春から夏にかけてのオープンキャンパスは、それを確かめる最初の機会です。今年の参加者は、これまでと同じ道筋で来ているのか。違うとすれば、どの道筋が増えているのか。

見るべきは総数ではありません。保護者や引率者を除いた受験生本人の数を、学年別に追う。3年生の突然来校が増えているのか、1年生・2年生の段階から接点なしで来ているのか。同じ「増えた」でも意味がまったく違います。そして来校の経由です。資料請求から来た人、高校の紹介から来た人、検索やSNSから直接たどり着いた人。その構成比が昨年からどう動いたかが、プロセスの変化そのものを映します。

資料請求リストの中身も同じです。総数は前年並みでも、高校構成が入れ替わっていることがあります。ある高校からの流入が止まり、別の高校から増えている。年度末に知るのと期中に知るのとでは、打てる手が違います。訪問先の組み替えも案内の送り分けも、9月までなら間に合います。

そして10月以降、総合型選抜と学校推薦型選抜の出願が動き出します。そこに向けて、見通しをシナリオ別に数パターン持っておく。上振れしたときはさらに上をどう狙うのか。届かなかったときはどこでリカバリーするのか。先に決めておけば、動きながら判断できます。

突然出願のような、こちらでコントロールできない動きに期待するのではありません。把握したうえで、自分たちが手綱を持つ。良い塩梅に着地させる。そこが学生募集を預かる仕事の醍醐味であり、戦略性が問われるところだと思います。

高校生の進路選択のプロセスは、私たちが思うより速く変わっています。そしてその変化は、進路指導のあり方だけでなく、生成AIを中心とした技術の変化と地続きです。年度が終わってから気づくのでは遅い。募集を預かる立場として、兆しをリアルタイムに拾う仕組みを自校の中に持っておきたいところです。

参考資料

免責事項

本コラムに記載した調査データは、上記の参考資料に基づく2026年7月30日時点のものです。その後の更新により内容が変わる場合があります。また、当該調査は米国の高等教育機関を対象としたものであり、日本国内の実態を示すものではありません。

本文中の国内の傾向に関する記述は、当社が支援する学校のデータに基づく筆者の観察であり、統計的に検証されたものではありません。意見にわたる部分は筆者個人の見解です。個別の募集設計に関する判断は、各校の状況に応じてご検討ください。

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