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AIに任せない場所を先に決める 募集業務と生成AIの境界線

8月のオープンキャンパス。学生スタッフが高校生の隣に座って、キャンパスライフの話をしています。保護者は少し離れたところから、その様子を見ている。この光景をつくるために、募集担当者は前日まで動き続けています。

そして当日の夜、その同じ担当者が、オープンキャンパスレポートを投稿するために原稿を一文字ずつ手打ちしている。ここ数年、あまり変わっていない風景だと思います。

文部科学省は7月30日、中央教育審議会の情報・技術ワーキンググループに、次期学習指導要領に向けた情報教育の取りまとめ案を示しました。「プログラミング的思考」の捉え方を広げ、実現したい内容を整理してAIに指示を出し、生成されたものが妥当かどうかを論理的・批判的に検討して改善する力を育てる。高校の情報科では、生成AIを使ったプログラミング学習を想定しています。

目を引いたのは、その次に置かれた指導体制の改善プランです。2028年度までに、中学校技術科と高校情報科で臨時免許状所有者と免許外教科担任をゼロにする。2026年度から全国規模のオンライン免許法認定講習を実施する。

つまり、教える内容を決めると同時に、それを教えられる人をどう揃えるかまで、期限を切って工程に入れている。AIの出力を評価する力を育てるには、評価できる教員がまず要る。その調達計画を先に持ったということです。

一方、私たちの側はどうでしょうか。

募集の現場では、生成AIの活用はこれからという学校が多いように見えます。広報原稿の作成に部分的に使ってみている、という段階が多いように思います。

これは現場の努力が足りないという話ではありません。オープンキャンパス、高校訪問、募集要項の作成、入試の運営。手を動かす仕事が季節ごとに切れ目なく続き、新しい道具を試す時間そのものが取れない。そういう構造です。

ただ結果として、禁止か容認かという議論の次に来る「どこまで任せるか」という問いに、答えを持たないまま時間が過ぎていきます。

私は、もっと任せていいと思っています。

順番は、任せられるものを探すことではありません。人間にしかできない仕事を先に見極めて、それ以外をどう手放すかを考える。決めるべきは、任せない場所のほうです。

では、任せられないものは何か。私の答えは、オープンキャンパスでの学生対応です。

規模の大きくない大学ほど、学生と教職員の距離の近さが強みになります。教員が学生の名前を覚えている。事務室に気軽に入っていける。この空気は、パンフレットにも動画にも入りません。その場に立って、人と人が話して、はじめて伝わるものです。

高校生が知りたいのは、カリキュラムの中身だけではありません。ここで4年間を過ごす自分が想像できるかどうかです。そしてその判断材料は、施設でも実績でもなく、その日に会った学生や職員の表情や話し方だったりします。

だから、ここが機械的な対応になった瞬間に、その学校が持っている一番の武器が消えます。

そして、ここに人を立たせ続けるためにこそ、それ以外を任せる必要があります。夏の準備期間を手作業で埋めてしまえば、当日に残る余力は削られます。会場で誰にどう声をかけるかを考える時間も、そこで失われます。

この見方には反論があると思います。オープンキャンパスの対応も、いずれAIが担うようになる。人が出るべきだというのは慣れの問題にすぎない、と。

半分は、そのとおりだと思います。問い合わせ対応がAIに移ってきたことを考えれば、この先はもっと踏み込んだ領域まで、たとえば受験対策の相談や受験方式の絞り込みまで、AIが引き受けるようになるはずです。境界線はこれからも動きます。

ただ、多くの学校の実情は、その議論の手前にあります。SNSの運用に手が回っていない。広告媒体の原稿を一つずつ手作業で直している。境界線をどこに引くかを議論する前に、空けられる時間がまだたくさん残っています。

そこで最初の一歩として提案したいのは、任せるものを増やすことではなく、手放すものを一つだけ決めることです。

候補は、繰り返しが多くて判断の要らない作業から選びます。広告媒体に出す原稿の推敲。SNSの投稿文の下書き。高校向け案内文の型づくり。いずれも、完成品をAIに作らせるという話ではありません。最初の一案を出させて、人が直す。この形なら今日から試せます。

そのうえで、空いた時間を何に使うかを先に決めておく。時間は放っておくと別の作業に吸われます。オープンキャンパスの当日、担当者がやる気のみなぎった状態で、笑顔100点で会場に立てること。そこに使うと決めておけば、投じた時間の行き先がはっきりします。

この夏のオープンキャンパスで、みなさんの学校の一番いい場面はどこにありましたか。学生が高校生に何かを話していた、その数分間だったのではないかと思います。

その数分を来年は10倍に増やすために、今年のうちに手放しておけるものは何か。記憶が新しい今のうちに考えておきたいところです。

参考資料

免責事項

本コラムに記載した制度に関する情報は、上記の参考資料に基づく2026年8月7日時点のものです。次期学習指導要領に関する内容は審議中の取りまとめ案に基づくものであり、今後の審議により変わる場合があります。最新の状況については、文部科学省の公表資料を必ずご確認ください。

本文中の募集の現場に関する記述は、当社が支援または見聞きした事例に基づく筆者の観察であり、統計的に検証されたものではありません。意見にわたる部分は筆者個人の見解であり、特定の大学の対応を推奨または批判する意図はありません。個別の募集設計に関する判断は、各校の状況に応じてご検討ください。

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