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高等教育政策・大学経営

高等教育の修学支援新制度 最後まで付き合える人は、何人いますか

オープンキャンパスの相談ブースで、保護者からこう聞かれる場面は、これから増えていくはずです。「うち、子供が3人いるんですけど、無償になりますよね」。

ある学校のオープンキャンパスで、学科の教員がこの質問を受け、答えを持たないまま言葉に詰まる場面に居合わせたことがあります。最後は学費に詳しい職員が引き取りました。入試広報の担当者なら、ある程度までは答えられたはずです。問題は、誰がどこまで答え、どこから先を渡すのかを決めていなかったことのほうです。その線が揃っていなければ、答えは聞いた相手によって変わります。踏み込んで間違えるほうが怖い。その判断は理解できます。

令和7年度から、扶養する子供が3人以上の世帯は、所得制限なく授業料と入学金の減免を受けられるようになりました。国が定める上限額は、私立大学で入学金26万円、授業料70万円です。

条件は「3人以上を同時に扶養している間」です。第1子が就職などで扶養から外れ、扶養する子供が2人になった時点で、多子世帯としての支援は終わります。しかも判定は入学時の一度きりではありません。採用後は毎年10月に、前年12月31日時点の情報で確認されます。

続く前提は、扶養の状況だけではありません。採用後は学業要件も課され、出席率や修得単位数が一定を下回れば支援は打ち切られます。この要件は令和7年度から変わり、令和6年度以前からの在学者にも適用されています。

そしてこの判定は、進学前の予約採用で申し込む段階から始まります。出願先を決める前に見通しを持ちたい家庭が、相談の場に来る理由ができています。

対象は機関要件の確認を受けた学校に限られます。令和8年4月1日時点の確認校数は、大学・短期大学が989校、専門学校が2,063校。学校数に占める割合は95.6パーセントと79.6パーセントです。この学校数には、大学院大学と、募集停止や休校の学校は含まれていません。自校が対象かは、説明の前提そのものです。

制度が分かりにくいという話ではありません。FAQまで含めて公開されています。合っていないのは、説明の場のほうです。全体説明会は数百人を相手にした一方向の場で、条件分岐まで話せば大半には届きません。かといって触れなければ、「無償になるらしい」という粗い理解のまま出願先が決まっていきます。高校の進路指導が全部引き受けられているかというと、実態としてはそうなっていない。誰も説明しきれていない領域が、そのまま残っています。

私がお勧めしているのは、場を分けることです。

全体説明では「そういう制度があります」というところにとどめる。踏み込まないのは説明を省くためではなく、個別相談へ来てもらうきっかけを意図的につくるためです。そして面談の場で、詳しい方が「対象ですね」まで一緒に確かめ、手続きまでフォローする。

ただし、効果は限定して見ておいたほうがよいと思っています。一般選抜の志願者数を最大化するところには、あまり寄与しません。多くの併願先の一つとして受けにくる層は、学費の相談のためにわざわざ足を運んだりはしないからです。

効くのは、専願で1校を早いうちに決めていく層です。この層が見ているのは、支援を受けられるかどうかだけではありません。家庭の事情に踏み込む話を、その学校が引き受けたかどうか。最後まで付き合ってもらえたという経験は、4年間をここで過ごすという判断そのものに効きます。だからクロージングの一手として有効だと考えています。

細かい条件まで大学が説明する必要はない、それは日本学生支援機構と高校の進路指導部の役割で、大学が踏み込めば案内の責任を負う。そういう意見はあると思います。もっともな指摘です。ただ、担当を決めずにおくほうが、誤った案内は起きやすくなります。

最初の一歩を一つに絞るなら、オープンキャンパスに奨学金と学費支援の専門ブースを設け、この制度に詳しい方を置くことだと思います。人を雇う話ではありません。学生支援の担当者に、当日の数時間だけ入ってもらう。入試広報は全体説明の最後に「学費や奨学金のご相談は、あちらのブースで」と一言添える。それだけで、制度の話は「聞いても曖昧な答えしか返ってこないもの」から「あの学校では確かめられたもの」に変わります。

学費の説明は、入学年度の金額を示すことだと考えられてきました。この制度は、そこに「4年間その条件が続く前提は何か」という問いを持ち込みました。

自校のオープンキャンパスで、その問いに最後まで付き合える人は、いま何人いるでしょうか。

参考資料

免責事項

本コラムに記載した制度および統計に関する情報は、上記の参考資料に基づく2026年8月28日時点のものです。その後の改正や更新により内容が変わる場合があります。制度の詳細および最新の状況については、文部科学省および日本学生支援機構の公表資料を必ずご確認ください。

本文中の学校の傾向に関する記述は、当社が支援または見聞きした事例に基づく筆者の観察であり、統計的に検証されたものではありません。意見にわたる部分は筆者個人の見解であり、特定の大学の対応を推奨または批判する意図はありません。個別の募集設計および学費に関する説明については、各校の状況に応じてご検討ください。

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