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高等教育政策・大学経営

波で伸びた分と、自力で伸びた分  入学定員充足率102.7パーセントの実態

募集の数字が動いた理由を説明するとき、外部環境の話から入ることがあります。18歳人口が増えたから。上位の大学が絞ったから。実際そのとおりであることも多いはずです。ただ、下がった年も上がった年も同じ言葉で説明がついてしまうのが、この種の話の難しいところです。

私立大学595校の入学定員を合計し、そこに入学者数の合計が何パーセント届いたか。この入学定員充足率が102.7%になりました。定員割れの大学は前年度より41校減って275校、全体の46.2%です。良い数字が出た年は、その先を確かめる機会が、かえって少なくなります。

日本私立学校振興・共済事業団が2026年8月に公表した「令和8年度 私立大学・短期大学等 入学志願動向」の内訳を見ていきます。

志願者数は前年度から9.1%増えました。ところが入学者数の増加は0.7%にとどまります。合格者数はむしろ2.4%減っており、合格率は4.1ポイント下がって34.7%。一方で歩留率は1.1ポイント上がって36.0%になりました。入学定員も2,173人減っています。

短期大学は充足率が8.1ポイント改善して82.0%。ただし集計対象校が249校から228校へ減っています。募集を停止した学校は集計から外れます。

私立大学等経常費補助金の収容定員超過率への一本化は、数年前から言われてきた話です。見落とされがちなのは、段階的な引き下げが令和7年度で完了している点で、基準はいま最も厳しい水準にあります。

志願者は大きく増えたのに、入学者はほとんど増えていない。受験生一人あたりの出願校数が増え、大学は合格者を絞り、一人の入学者を得るまでの分母が膨らんだという姿です。

私たちが関わっている学校では、年明けの一般選抜の合格歩留まりが2年続けて上昇しているところが多くあります。すべてではありませんが、総合型選抜と学校推薦型選抜で専願の出願者が伸びたことも重なっています。

歩留まりが上がったのは、上位大学の収容定員の管理が効いてきたためだと考えています。

収容定員は4学年分の合計です。ある年に多めに取れば、その学年が卒業するまで数字に残ります。多少多めなら許されてきた運用が通らなくなり、上位の大学から順に合格ラインを厳しくしていく。滑り止めのつもりだった学校しか受からず、その滑り止めにも届かない。合格難易度の帯を一つ下ったところまで、歩留まりが上がります。

この波がどこまで降りるかは、地域によっても分野によっても違います。調整を終えた学部や地域では、来年から歩留まりが下がることも考えられます。逆に、その帯の学校が予定より多く確保すれば、今度はその学校が絞る番です。同じことが順に起きる余地は、まだ残っています。

理由がどうあれ埋まったのなら成果ではないか、という見方はあると思います。短期的にはそのとおりです。ただ、上位が絞ったことで流れてきた層は、自校が何かをしたから来たわけではない。翌年に同じ手を打っても再現しません。

そこで、今年の増加分を入試区分ごとに分け、それぞれの出身高校が前年からどう変わったかを並べて見ることになります。

もっとも、実際にそこまで見に行く学校は多くありません。年度の終わりに共有されるのは、たいてい「増えた」「減った」というところまでです。データが足りないわけではありません。区分別の入学者数も出身高校も、出願のデータには残っています。それでも、どこで差がつき、外の動きと自校の打ち手のどちらが効いたのか。そこを分ける手前で終わってしまう。結果を見た時点で、確かめた気になるのだと思います。

見える範囲に限りもあります。同じ大学の他学部・他方式との併願は追えますが、他大学とのあいだで何が起きたかは自校に残りません。そこは歩留率から読みます。合格者の出し方が前年と同じなのに歩留率が上がっているなら、他大学に流れていた層が残ったと考えられる。絞った年は、絞った分と外の動きの分が混ざります。

顔ぶれが前年と変わっていない区分は、翌年も同じように取れる見込みが立ちます。逆に大きく入れ替わっている区分は、他校の動きに左右された分が大きい。そこは落ちる前提で計画を組んでおく。ただ、自校の成果を自分たちで値踏みするのは難しい。手を尽くした年ほど、その分を大きく見たくなる。自分たちだけで結論を出さずに済む見方を一つ持っている学校のほうが、この判断は速いように見えます。

分析は、どこに人と予算を寄せるかを決めるための作業です。

18歳人口は今年こそ2千人増えましたが、来年また減ります。そして今年の充足率は、地域よりも規模ではっきり分かれました。入学定員600人未満の区分はすべて100%に届かず、600人以上の区分はすべて超えています。100人未満の区分は83.7%です。同じ都市圏のなかでも、置かれている状況は大きく違います。

今年の増加分がどこから来たのかは、あとからでも調べられます。3年分、4年分と遡って同じ形に並べれば、波で動いた分と自校で積み上げた分は、かなり見分けがつく。私たちが分析するときも、たいてい過去3年から4年をまとめて見ます。

足りないのはデータではありません。結果が出たところで手を止めずに、その先を見に行くかどうかだと思います。今年埋まった分の内訳を、来年の自分は説明できるでしょうか。

参考資料

免責事項

本コラムに記載した制度および統計に関する情報は、上記の参考資料に基づく2026年8月21日時点のものです。引用した令和8年度の集計値は速報値であり、次年度の集計をもって確定数となります。その後の改正や更新により内容が変わる場合があります。最新の状況については、文部科学省および日本私立学校振興・共済事業団の公表資料を必ずご確認ください。

本文中の学校の傾向に関する記述は、当社が支援または見聞きした事例に基づく筆者の観察であり、統計的に検証されたものではありません。意見にわたる部分は筆者個人の見解であり、特定の大学の対応を推奨または批判する意図はありません。個別の募集設計については、各校の状況に応じてご検討ください。

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